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日本を蝕む「働かざるもの食うべからず」

タイトルはホッテントリメーカーからです。ありがとうございました。

働かざる者食ってよし! - ish
わたし自身が「稼いで稼いで使って使って」という都会的・近代的な世知辛い生活に振り回されて、忘れがちだからこそこうして書きとめておきたいのですが、そういう生活をしていると、つい本気で「働かざるもの食うべからず」と信じ込んでしまいます。働きたくても仕事のない人すら、なんだか怠けているような、無為に福祉財政を食いつぶしているような、暗黒な目で見る心に侵食されてしまいます。
 しかしこの心は、サタンの罠です。
 働かなくたって、食っていいに決まっています。

「働かざるもの食うべからず」という言葉には思い出があります。学生の頃、家庭の事情で学費&生活費を自分で稼いでいたのですが、なかなかお金は自由になりません。友人にお金を借りることも少なからずありました。で学生なので、ちょっと遊びに行ったりもします。そういう時、とある友人に「『働かざるもの、食うべからず』だぞ。遊ぶ暇があったらお前はもっと働け」という"100%正しい忠告はまず役に立たない(by河合隼雄先生)"的一言を言われ、その通りなんだけど、何か釈然としない感じでした。十数年経った今でもちょっとしたしこりのようにこの「働かざるもの食うべからず」が何かしら頭の片隅に残り続けています。

で、その「働かざるもの食うべからず」なのですが、最初の出典は新約聖書のテサロニケ人への第二の手紙です。

ニートひきこもりJournal: 「働かざるもの食うべからず」は新約聖書が由来だった
兄弟たちよ。主イエス・キリストの名によってあなたがたに命じる。怠惰な生活をして、わたしたちから受けた言い伝えに従わないすべての兄弟たちから、遠ざかりなさい。わたしたちに、どうならうべきであるかは、あなたがた自身が知っているはずである。あなたがたの所にいた時には、わたしたちは怠惰な生活をしなかったし、人からパンをもらって食べることもしなかった。それどころか、あなたがたのだれにも負担をかけまいと、日夜、労苦し努力して働き続けた。それは、わたしたちにその権利がないからではなく、ただわたしたちにあなたがたが見習うように、身をもって模範を示したのである。また、あなたがたの所にいた時に、「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」と命じておいた。

キリスト教では労働は神から与えられた原罪故に行わねば成らない課業なので、怠惰を戒め神から与えられた労働という苦役を共同体で分かち合うことを重視した教えが「働こうとしない者は、食べることもしてはならない」=「働かざるもの食うべからず」だったようです。

近代に入ってこの「働かざるもの食うべからず」を効果的に引用したのがレーニンで、彼は当時ロシアに居た貴族や資本家などの特権階級が労働することなく贅沢な生活をしていたことを攻撃するため聖書のこの一節「働かざるもの食うべからず」を引用しました。働いてないのに贅沢な暮らしをしている特権階級を倒して共産主義革命を!という趣旨での「働かざるもの食うべからず」です。

参考
「働かざるもの食うべからず」この言葉は誰の言葉でしたっけ?また、どんな意味で... - Yahoo!知恵袋
パウロとレーニンの「働かざるもの食うべからず」との言葉は同じ意味に解釈すると... - Yahoo!知恵袋

この「働かざるもの食うべからず」が日本でも使われるようになったのがいつのことかはよくわかりませんが、おそらく、レーニンの演説経由だと思います。日本ではこの一節は、ある種強迫性を伴って勤勉さを奨励する語になっていますね。浸透したのは高度経済成長期なのではないでしょうか。池田隼人首相の名言(と言っても演説をマスコミに曲解された一節ですが→池田勇人 - Wikipedia)「貧乏人は麦を食え!」ととても近しい観念のように思えます。それまで勤勉とまでは言えなかった日本人を労働へと走らせるのに「時は金なり」と並んで効果的な一言でしょう。勤勉とまでは言い難かった当時の日本人を高度経済成長期に労働へと走らせるために何者かが、あるいは時代そのものに「働かざるもの食うべからず」という言葉を利用されたのだと思います。

そして、この言葉はそろそろ役割を終えようとしているのではないだろうかと思います。働こうにも仕事が無い状況で、この言葉は残酷でしかないし、働くことに意味を見出そうとする価値観に対しても、この言葉は無力です。何かこういう言葉を打ち消せる新たな労働観は無いかなぁなんて考えている今日この頃でしたので、そういう中でこのishさんの「働かざる者食ってよし!」は爽快で良いなぁと思いました。

我が家では一昨年はきゅうりを、去年はレタスを、今年は再びきゅうりとチンゲンサイなどをベランダで育てております。昔当時の同僚に「東京の空気で育った野菜って食べたいですか?」とこれまた100%正しいけど役に立たない忠告をもらったのですが(笑)、いいんですよ。ベランダで育っていく姿を見ることに意味があるんですから。きったない東京の空気で育ったきゅうりをぼりぼりむさぼりながら、食べることとは関係なく、道徳観も労働観も無く生きることの一部として働く。って結構いいんじゃないかなぁ。


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