<< 人はなぜ、自己として夢を見るのか? | main | 去年の今日は埼玉で40.9度を記録した日 >>

Googleすら攻めあぐねる天然の要害〜池上本門寺とその周辺

私、西馬込住人だけど | 陽のあたらない美術館 -人間再生-
Google Street Viewの空白地帯 - ARTIFACT@ハテナ系
ストリートビューで見る池上界隈

上記リンクでも話題になっていますが、ストリートビューで、本門寺の界隈の巨大な空白を見たとき、ああ、あの辺丘陵地で車で行くの大変そうだから後回しにしたのかなぁとか思いました。今年の春、「池上梅園(Kousyoublog | 池上梅園の梅370本が満開で圧巻)」へ梅見に行ったついでに、池上本門寺周辺を散歩したのですが、一回りした印象は、正直言ってここは天然の要塞だなということでした。多分、普通に歴史上の名所旧跡、特に城跡を散歩した経験がある人なら、池上本門寺に行くと、これは城があった場所ではないか思うのではないでしょうか。

で、本門寺の歴史は追々調べようと思っていたので、ストリートビューを見たときからタイトルのような記事を書こうと思っていたのが、やっと出来上がりました。

池上本門寺周辺は四方を険しい斜面に囲まれた小高い丘の上にあり、西から南へと周りを取り囲むように、かつてその名の通り牛をも呑み込む急流で鳴らした呑川が流れ、北から西に通る東海道(現第二京浜)に睨みを利かせています。

ということで、いくつかスポットを見ながら、池上本門寺の歴史に迫ります。

池上梅園から西回りで池上本門寺へ向かいました。

大坊本行寺
大坊本行寺
弘安五年(一二八二)、日蓮が最後の20日間を過ごした、この地域を治める地頭池上宗仲氏の居館があった場所です。現在は大坊本行寺となり、三院家の一つとして日蓮入滅の重要な寺院とされています。この池上宗仲と日蓮の関係は結構核心に迫る部分だと思うので少し詳しく調べてみると面白い。

この地の豪族池上氏の出自は藤原氏の一族で京都で御所の守護に当たっていたが建長四年(一二五二)に宗尊親王が征夷大将軍となるのに付き従ってこの地に来た説と、やはり藤原氏の一族で、天慶三年(九四〇)、平将門の乱の際に東国に下向した後、源義家に従い、頼朝の挙兵から使える御家人という説とがあるが、どうやら後者の説の方が有力らしい。

代々建築のプロフェッショナルとして、鶴岡八幡宮の造営に関わり、また宗仲の父宗親(康光説もある)は造営奉行として京都御所の造営の指揮を執っている。

当時たびたび幕府は日蓮とその門徒に弾圧を加えていたが、そんな中、池上宗親の子宗仲、宗長兄弟とその妻らは日蓮を熱心に信奉するようになり、父は日蓮に心酔する長男宗仲を勘当、宗長に継がせようとするが弟も兄の側につき、親子対立が深まっていた。

この間、日蓮はしきりに宗仲・宗長兄弟に手紙を送り、父との対立で挫けない様に熱心に説得をしている。このあたりの日蓮の手紙は苛烈で「たとえ親子であっても誤りを誤りとして正すことが子としての孝養である」「法華経を信じる子を勘当する親は地獄行きはまぬがれない」など宗教的アジテーターの雰囲気が良く出ている。

最終的には父も子供たちの説得に応じて日蓮宗に改宗し、1279年ごろに他界する。そして日蓮の死後、当主池上宗仲は居館のあったこの場所と所領のうち居館の背後の丘陵地六万九千三八四坪(法華経の字数と同じ)を日蓮宗へ寄進している。

大坊坂
大坊坂
大坊本行寺から、本門寺へと抜ける坂です。坂の上からの眺めですが、なかなかの急な階段でした。小さな子を連れた親子連れがこの階段を下りていましたが、子供は一歩一歩確かめるように歩いていました。坂の途中には文政十一年(一八二八)に作られた、東京都有形文化財の宝塔がありますが、僕が行ったときは修復作業中でした。

本門寺大堂(祖師堂)
本門寺大堂
日蓮上人(祖師)を祀る堂で、その巨大さにたまげた。でかい。最初の大堂は慶長十一年(一六〇六)熱心な日蓮宗信者だった加藤清正が築いたが、宝永七年(一七一〇)焼失。続いて享保八年(一七二三)に時の将軍徳川吉宗によって再建されたが、昭和二十年(一九四五)の空襲によって焼失し、昭和三十九年(一九六四)に再建されたものだそうです。

五重塔
五重塔
慶長十三年(一六〇八)、江戸幕府二代将軍徳川秀忠の乳母岡部局によって建立された歴史ある塔。

妙見堂
妙見堂
加藤清正の娘で、紀伊徳川藩の藩祖徳川頼宣の妻瑤林院が寄進した妙見菩薩立像が置かれている。

妙見坂
妙見坂
妙見堂から下る石段。

朗慶山照栄院(南谷壇林跡)
南谷壇林跡
大坊本行寺、妙祐山理境院と並んで三院家の一つに数えられる寺院。日蓮宗僧侶の教育の場として、元禄二年(一六八九)に開創された南谷壇林(なんこくだんりん)が置かれていた。

本門寺公園
本門寺公園

本門寺公園
本門寺東側の斜面を使って作られた公園。斜面の傾斜具合がよくわかります。

貴船坂
貴船坂
本門寺東側の坂道。結構傾斜のある坂道です。名前の由来は、かつて本門寺にあった貴船明神という神狐の石像から。

これらの他、本堂にはアントニオ猪木をモデルにした仁王像や、力道山の墓、様々な文化財など多数あります。

さて、日蓮の死後、池上宗仲は約七万坪の所領を日蓮宗に寄進する訳ですが、かなり早い時期からこの一帯を寺院にするべく計画を立てていた様で、日蓮の弟子日朗と共に本門寺を開きます。

その後、本門寺は日朗のもう一つの活動拠点だった鎌倉比企谷の妙本寺と両山一貫主制(二つの寺院で同じ責任者)を敷いて、時の権力者と密接に結びつきながら勢威を拡大。第七世日寿は山内上杉氏に使え上野国守護職を務めた長尾実景を父に、後に狩野派を興す狩野正信、元信らを輩出する名門狩野家の女性を母に持つ。また、第九世日純は関東管領上杉氏憲の曾孫にあたり、第十二世日惺に至っては、時の関白二条昭実の猶子(となり、徳川家康が豊臣秀吉に従って北条征伐に出陣すると、武運長久を祈り、また家康が関東に配置換えになると同時に本門寺へとその居所を移して関係強化につとめている。

江戸時代に入ると、徳川幕府の寺院を要所に配置して江戸の町を作るという方針もあってか、さらに関係が強化されていき、代々徳川家の一族から多く信仰を集めるようになっていったようだ。

池上氏が寄進をした当時、鎌倉幕府の反応はどうだったのだろうと思うのだけど、そのあたりのことはよくわからない。ただ、時期的に元寇後の事後処理や、北条時宗の死、霜月騒動、皇位を巡る大覚寺統と持明院統の争い、平禅門の乱などまさに衰退期に入るあたりなのでそれらに忙殺されていたであろうことは想像に難くない。日蓮宗にとってはいいタイミングだったのだろうと言える。

まとめると、幕府から強力に弾圧を受けながら、有力な豪族の子息で、要衝の地に所領を持ち、しかも建築の専門家だった池上宗仲を信者にして、家族で対立になったら日蓮自ら全力でバックアップして決して信仰を捨てさせず、宗仲の親の死後はさらに交流を深め、日蓮最期の地として選び、その後は寄進という形でその所領を獲得。しかも、丁度幕府は衰退期に入っていた。後は、その時代時代に有力者と結びつきつつ、信者を拡大し、江戸時代に入ると徳川家の庇護の元で大きく繁栄していったという歴史があるのですね。

天然の要害と言っていい場所に池上本門寺があって、その周辺もアップダウンのある地区なので、まぁ、撮影して回るのは大変だろうなと思います。あと、上のリンクで挙げられている西東京市も東松戸も、起伏の大きいあたりなんじゃないかなーと。情報のフラット化を目指す企業が、実際の地形の起伏に阻まれた、というストーリーは興味を掻き立てるなぁ。


参考書籍・サイト
・「大田区史〈上巻〉 (1985年)
・「大田区史〈中巻〉」
・「東京ふる里文庫 大田区の歴史」
池上本門寺 - Wikipedia
大田区の城館(東京23区)
鎌倉幕府 - Wikipedia

池上本門寺
・東急池上線 池上駅下車徒歩10分
・都営地下鉄浅草線 西馬込駅下車徒歩8分

関連エントリー
Kousyoublog | 池上梅園の梅370本が満開で圧巻
Kousyoublog | 世田谷城址公園
Kousyoublog | 大渓山豪徳寺
Kousyoublog | 谷中霊園と天王寺
Kousyoublog | 烏山寺町めぐり(烏山の鴨池)
Kousyoublog | 5分ぐらいで分かる伊勢神宮の歴史
Kousyoublog | Googleストリートビューで五分で行ける東京観光主要20スポット
Kousyoublog | 江戸町人の<店を構える>意識の裏返しとしての現代人のプライバシー観

鎌倉仏教形成論―思想史の立場から大田区Walker (ウォーカームック 62)フラット化する世界 [増補改訂版] (上)フラット化する世界 [増補改訂版] (下)
東京散歩:神社仏閣 | trackbacks(0) | ブログランキング・にほんブログ村へ ブックマークに追加する あとで読むこのエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーを含むはてなブックマーク
この記事のトラックバックURL
http://kousyoublog.jp/trackback/1830
トラックバック
PROFILE
Kousyouのプロフィール
山野光正(やまのこうしょう)。ハンドルネームは名前そのままKousyouです。自由に色々やってます。

検索
人気・注目エントリー
このブログのはてなブックマーク数
今読んでいる本
SPONSORED LINKS
OTHERS
Subscribe with livedoor Reader Add to Google My Yahoo!に追加 あわせて読みたい スカウター : Kousyoublog
人気ブログランキング - Kousyoublog
  • seo